写真は、使えない、どうしようもない残念な残骸たち。でも、とても必要で大切なモノたち。
はじめてお世話になる職人さんとジュエリーをつくる時は、お互い手さぐり状態でとても慎重に、そして用心深く進めていく。
しかし、もともとの考え方や目指すところが違ったり、お互いのスキルが噛み合わなかったりする場合もあって、上手くいかないことも多い。はじめの時期に、その違いに直ぐ気が付けばお互いのキズや不利益は少なくできる。
この残骸たちは、これまでになく長引いて、間違いなく大きな痛手を私にもたらした。私だけでなく、たぶん職人さんにも痛手をおわせた。
でも、もう一度作り直していこうと決めたら、この残骸たちは、とても必要で大切なモノ。これがあることで、修正箇所が「具体的に理解できる」、本当にありがたい。必ず良いものになる、と確信できる。
「ただ良いモノがつくりたいだけ。それだけ。」
誰もがそうだと思うけど、これを貫くのは、結構シンドイ。そのことを職人さんや関わってくださる方が理解してくれることが、どんなに幸せなことか。そして、こだわれる時間があること、そうできることに感謝する。
昔、行ったエルメス展で、1枚のスカーフの図案だけに(彩色などなし、図柄だけ)に半年以上の歳月をかけるときいて、なんと優雅で贅沢な時間のかけ方だと羨ましく思う反面、ゾッとしたことを思い出した。
いま自分も似たようなゾッとする渦中にいると思うと、レベルは天と地で違うけど、少し誇らしい気持ちにもなる。
美しいモノは、血と汗と涙でできている、とは言いたくない。(言ってるけどね、笑)
特に、ジュエリーは、「夢よ花よの世界」で、非日常に連れていってくれるものであって欲しいけど、本当に美しいモノや良いモノは、血と汗と涙があるのかもね。
血と汗と涙、BTSの歌詞みたい。確かに、彼らも血と汗と涙の結晶だな。
最後まで、とりとめのない恥ずかしい話になってしまったけど、大変なこと以上に、つくるのは楽しい、ってことだと自分自身に言いきかせている。